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「40年先輩が後輩作品を観るという事件」


   


     2月 29th, 2012  Posted 12:00 AM

金沢21世紀美術館・市民ギャラリーで、
金沢美術工芸大学の卒業制作展を観ました。
40年先輩が社会へ飛び出す寸前の後輩、その作品を観るというのは、
私は「壮大な事件」かも知れないと思いました。
同期生たちと観ました。全員が40年間工業デザイナーです。
後輩たちには、やや遠慮も込めながらも厳しい意見だったかも知れません。
この作品は、「夢いっぱいで、流石に乗物大好き」の想いが詰まっている
ホバークラフトのスケートボード、
大学の買い上げ作品というだけに、力量ある表現でした。
「遊具としてのパーソナルホバークラフト」という題名、
濱田夏美さんの作品です。
彼女がすべての作品を解説してくれました。
すでにカーデザイナーへの扉を開けていました。
有名車メーカーでのデザイナー就職は決定しているということでした。
今年国内産業界では、
デザイナー採用がとても厳しい事情もわかっているだけに、
やはり、すでに実力の片鱗がある後輩たちは就職が決まっていました。
どうしても製品デザイン領域を集中して観ました。
金沢という場所ゆえにローカルな発表になってしまいますが、
それでも金沢市民の方々でいっぱいでした。
私自身、ふるさと福井に居た頃8年間、母校の非常勤講師を務め、
主には卒業制作のアドバイスをしていました。
だから、その当時、
卒業制作で印象深い後輩は作品で思い出すことがあります。
グラフィック系は格段に表現領域が拡大していて、
金沢美大の伝統は確実に継承されていました。
ただ、無念なことは「環境デザイン」です。
これは国内デザイン系大学すべてが
「環境=建築や都市景観」という定義性に誤解があります。
韓国・KAISTでは「環境デザイン」を
ロボットや情報空間を対象化しています。
鉄道デザインや工業用住宅なども確かに「環境」ととらえること可能です。
しかし、デザインによる未来獲得からはずれていると言わざるをえません。
今年、KAISTの環境系デザイン担当教授2名の招待講演と、
その領域の大学院生の短期留学を私の阪大研究室は受け入れます。
ともかく、40年も私たちは金沢美大デザイン系学生の先輩ですが、
後輩達の「未来志向の作品」を観るというのは、
本当に壮大な事件であり、幸福な一時でした。

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