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「芸術という技法が引用したことから」


   


     3月 3rd, 2012  Posted 12:00 AM

アーティスト・角永和夫氏は、芸術という技法で、
私たちに突きつけてきた事実でした。
芸術技法がその事実を訴求していることです。
私のまなざしの評価軸=物差しは、
宮川淳から学んだことで咀嚼してきました。
だから「引用」ということばでまとめると、
この芸術は「自然と人間の関係」を
蚕という「家畜の存在」を引用していることです。
蚕が、今ではすっかり遺伝子操作された繭として
身体を包むのではなくて平面繭を吐き続けます。
そして、その役割を終えた命を自然界に戻すことはすでに限界、
役目終了の命は産業廃棄物だという事実。
繭は絹という人間にとって
素晴らしい美の素材を与えてくれますが、
蚕を家畜とする人間・対・自然は、
果たして人間が自然への対決を目指した成果でしょうか、
それとも自然界を見事に利用した調和でしょうか。
どちらなのかと言い切る事はすでにアポリアになりました。
私は、たかが蚕という虫に過ぎないからとか、
人間の文明=飢えと寒さから絹織物で身体を護ること、
その意味性を問い直します。
蚕を引用し再度検証し直さねばなりません。
芸術という技法は、
人間と自然の関係に「蚕と繭」を引用して見せた作品です。
私はこうした「引用」を差し出すアーティストを敬愛します。
だからこそ、芸術家の問題意識を
デザインは真正面からその問題解決に向かう姿勢が必要です。
まさしく、モホリ=ナジが
「デザインとは社会に対する姿勢」と言い残したことに通底します。
私は「繭と原子力」をこの引用から引き出すことさえ可能と考えます。
彼のこの芸術的営為は、米国を拠点としていることもあって、
自然保護団体からバッシングされていると
美術館のキュレーターの方々から聞きました。
私はこの作品制作の全過程をDVD出版してほしいと伝えました。
金沢21世紀美術館からは記録DVD15分をいただき、何度も見ました。
したがって、
このブログでの写真はすべて作家と美術館から拝借したものです。
今日は「ひな祭り」です。
女の子の成長を絹織物の着物を纏って祝います。
自然からの文明を創出した繭から絹素材が身体を護ります。
「ひな祭り」は文明から引用し昇華された文化という制度です。

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