現代、
ジャーナリスティックに
饒舌に記述され語られる
「かたち」が、
生活誌に安定した存在感を
与えないのは、
この態度、
多様性を収集したなかから
生み出されたモノの歴史に
ラジカルなモノが
余りに少ないからだろう。

この多様性こそ、
「かたち」に反映すべき
デザインの歴史に対する
役割であり、
歴史との闘争の
武器になるはずだ。

記述された歴史に比べて、
生活誌には
記述されなかった
多様性があるはずだ。

したがって、
記述された歴史を
検証するためには、
生活誌を丹念に
収集することであろう。

記述された歴史から、
このアドバイスを
つかむのは
至難のわざと言えよう。

歴史が
それも気まぐれに
教えてくれるのは、
未来を展望できる
見晴らしの場所を
不要意に
口をすべらした時
だけである。

未来が
歴史から見えるとは
言いがたい。

「かたち」の創出に
理想を掲げるデザインが、
歴史に飛び込まなければ
ならないのは、
この操作と
闘争するためである。

しかし、
この「かたち」にも
歴史が襲いかかるとき、
「かたち」の出現
そして消尽も、
どこかでだれかの
操作に委ねられて
しまうものだ。

そして、
「かたち」は
歴史のなかで
現前と消滅を
繰り返すことで、
生活の期待と
希望を育んできた。