位相となりうるものそのものへの視線が
デザイナーのまなざしでありたい。

わが国のデザイン発展史は、
産業による国家強化の
大きな支援制度史にも
なりうるわけであり、
産業、経済の位相に寄りかかる以外の
手法を見い出すことには
思いもいたって来なかった。

時代のこの転機は、位相の質の確認が
デザインの意欲になりがちである。が、
これは何の効果も生み出さない。

永続性を持っているがゆえに、
その「かたち」は内容を吟味することなく、
その形式だけをグッドデザインとして
評価する事態が慣例となってしまっている。

流行的という文脈で
解釈されてしまう「かたち」にも、
形式の認知が容易になされたほどには
内容は理解されずに、
時代が廃棄するデザインは
あとをたたない。

デザインが時代を変革する形式を発見する時、
社会にとってのデザインが
その内容で評価されることは
瞬間でしかないかもしれない。

未だデザインが対象化しなかった事態に、
位相となるべき時代が訪れようとしている。