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『資本主義からの逃走』
    「 富の分配意図、その実験国家だったわが国」


   


     9月 6th, 2010  Posted 12:00 AM

敗戦で決定づけられたこと
わが国の敗戦が招き込んだことは尊大かつ甚大でした。
日本の生活習慣から伝統的な精神性までが全否定されたとも考えられます。
しかし、そのショックは、米国流の資本主義体制で癒されました。
私の世代は、大きな冷蔵庫、家庭に一台の車、IVYスタイルのファッションに憧憬しました。
癒されると同時に、日本人の復興意志も強大だったと考えます。
すでに敗戦、それも2度にわたる原爆被災は「敗戦のトラウマ」になりつつも、
復興意欲は積極果敢だったのです。
しかも「戦争回避」・「専守防衛」での「平和志向」は、
人間としての正道だったことも存分に納得できます。
軍産複合体の解体は資本主義の本来は正義性あるものだったと私は考えますが、
結局は、理想主義となる資本主義が試されたのは、
国際的には日本だけだったという判断も可能です。
資源無き島国の民族、その存続を「資本主義」にあずけたことは、
抗えない敗戦国の運命だったのでしょう。
敗戦ショックとトラウマでの喪失
現代、失われた10年と言われますが、
それは資本主義の実験国家としての成長が10年しか続かなかったという評価が可能です。
「富の分配」は確実に、この10年間は「中産階級」を基軸とした、
倫理性と治安ある国家体制を構築できました。
けれども「貧しいこと」から脱出するには、
「拝金主義としての資本主義運営」を信仰し過ぎた結果を、今、目の当たりにしています。
家族崩壊・個人権利の保全・義務放棄しながらも自由権利の主張など、
社会意識、資本主義経済での生産下意識主義は歪曲されてきたのです。
資本主義の拝金主義は、金融経済中心に偏向していることへの抵抗もかなわぬままに、
さらに地球環境から国際関係でのわが国の立場は、
「経済成果として世界経済への分配」負担だけを受け入れる意識構造になっています。
わが国の資本主義は、見事な先進的技術による「モノづくり」国家になりました。
しかし、貿易の基本ルールは、あくまでも、キリスト教的背景のある資本主義体制です。
中韓アジアでの新たな「モノづくり=貿易体制」は、
急激な変貌下にあります。日本はそのモデル国家だったことも明らかです。
私は、資本主義の実験国家としてのわが国は、
敗戦ショックと敗戦トラウマで喪失している、わが国の伝統文化の再考と再興を訴求する次第です。


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