7月 2nd, 2019 Posted 12:00 AM
最近のいわゆる継承だけの伝統工芸産地では、間違いが大変多いのです。
私が関わる打刃物の世界でも例にもれずです。
ここに、右には「蛸引き」、左が「柳刃」があります。
蛸引きは、関東地方、柳刃は関西地方で多く用いられます。
関東の蛸引きが先端が四角系なのは、
喧嘩に使われないためだというのは正当な話です。
そしてこの頃は、使用地方も混在し、柳刃が主流になっています。
また、私が衛生の面から一番存在拒否にこだわってきた
朴ノ木の持ち手が未だに使われています。
というか、一周回って元に戻ってしまったのです。
朴ノ木は、鋼材に対しての消耗品、商売のモノであり、
検査から大腸菌がいっぱい検出したことで、これを止めて
ステンレスでのサンドイッチで鋼を挟むことになったのが
私の一体型の包丁でした。
O-157を食い止めることにも一役を買います。
最近では「ダマスカス風の素材」と昔の文化包丁の組み合わせは、
刃物バブルになっています。あれは米国のハンティングナイフです。
これらの包丁は刺身包丁なので、
大きくは「平造り」と「そぎ取り」などを料理人は
とても細いこの刃物で仕上げますが、
時には、寿司職人と言えども不出来な人も多くなってきています。
何よりも私は、子ども達はじめ、人が犠牲となる犯罪が、
こうした刃物が武器となることに耐えられません。
いづれ、私はアドバンスデザインをうちあげ、
しかもビッカース硬度を表示する社会規範が必要と思っています。
伝統とは「裏切り」ですから、
肉体は切れないが、魚はもちろん、野菜や果物はとっても切れる、
そのような日本ゆえの「切れ味」を発表したいと思っています。
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12月 20th, 2011 Posted 12:00 AM
プロのデザイナーになってから、
最も使ってきたのが鉛筆です。
だからきっとこれからも鉛筆については、
何度も何度も書いていくことになると思います。
プロとしての日常は、「スケッチを描くこと」です。
その道具である鉛筆は消耗品ですから、
削って使えば短くなります。
あるとき、どこまで鉛筆を使うかを決めようと思いました。
そこで、名刺ケースを筆箱にして、
最後は、ケースの短辺に収まるとなったとき、
「ごくろうさん」ということでこの長さで休ませようと決めました。
その時はナイフではなくて鉛筆削り器で削り直すことにしています。
ケースの長辺はまだ現役ゆえに使います。
このような使い方をしていくうちに、
使いきった鉛筆がケースに収まっているのを時々見ると、
これが自分の思考・スケッチワークの形見になっています。
だから、このケースを収集することが自分の足跡だと思うのです。
したがって、アイディアに詰まったり、
正直、自分を支える事が出来ないほどスランプが襲ってきます。
でも、この使い切った鉛筆、まだ現役の鉛筆を見ると、
とても元気が出てきます。
先般、筆記具のことを講演会で聞かれました。
以前にも、この鉛筆への私の作法を書いたことがありますが、
あらためてもう一度書いておきたいと今日はそんな気分でした。
2011年これほど人生において日本中が哀しい年はありませんでした。
来年には考え抜いた復興デザイン計画をプレゼンします。
今年最後の打ち合わせをしました。
そして元気の素である「鉛筆への作法」をもう一度見つめています。
やはり、筆記具として鉛筆と生きていくと思います。
使い果たしていく鉛筆を見つめれば、「元気」になります。
この鉛筆への作法こそ、プロとしての鉛筆への感謝でもあるのです。
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2月 17th, 2010 Posted 1:00 AM
棒鞘
1300年中期、南北朝の時代です。まさに、戦国時代。
後に始まる鉄砲、それが無い時代ゆえ、武器は日本刀のみ。
日本刀といっても、まだ、洗練される以前の形態。
北陸には京からドロップアウトしてきた刀匠がいました。
その中に、千代鶴国安(二人説もあり)がいました。
「越前打刃物」の祖です。
草刈り鎌の発案者と言われています。
さて、刀は作っても作っても戦国の世では消耗品でした。
刀より、それを納める鞘が間に合いません。
そして、生まれたのが、棒鞘でした。
生木を漆にドブ付けしただけのモノでした。
ところが、北陸で打たれて作られた刀は、
太く切れ味は抜群でした。折れなくて重量がありました。
だから、
棒鞘を下げている野武士はそれだけで威嚇できました。
まさに、棒鞘の刀は「切れ味」武器そのものでした。
この棒鞘の刀が後世残ったのは新撰組の近藤勇の刀です。
日本刀が洗練されていくには、二つの要素が必要でした。
● 機能性=性能性が素材の革新によって、高質軽量になる。
● そうした機能性が「象徴」化されて美的効能性となる。
日本刀
やがて、サムライにとって、刀が、
「武士の魂」と呼ばれる「美学性」に高められるのは、
言い換えると、
「イノベーションとシンボル化」です。
つまり、
モノの存在性が、「美学性」を獲得するには、
こうしたコンテクストが不可欠であり、
さらに、シンボル=象徴によって、
あらためて、モノと心=魂=いのちの核心が、
一体化しなければならないのです。
「かたち」という存在と「いのち」との結合が、
日本人の「美学」だと、私は考えます。
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