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Posts Tagged ‘夢の形見’


「資本主義からの逃走」
  「『仮名消息』、これも『夢の形見』だ」


   


     2月 8th, 2011  Posted 12:00 AM

土佐絵師・冷泉為恭
冷泉為恭という土佐絵師がいました。
彼は土佐絵の中興の名手です。
そして、幕末には勤王派で幕史から狙われる危険人物。
逃亡の時にも、肌身離さず所持していた書物がありました。
「伝藤原行成筆の『仮名消息』」でした。
彼は緊急事態でとうとうその書を神光院に託したと言われるほど劇的な逸話があります。
冷泉為恭は、絵師であるばかりか書に対しての研鑽も並外れた人物でした。
この書は、歴史的に次々と持ち主が変遷しました。
行方不明説もありましたが、昭和28年頃に、東京美術倶楽部に入札されて存在が判明。
無論、偽物も数多く出回ったということです。
持ち主の変遷を辿るだけでも、この書の偉大さが分かります。
偽物に纏わる話も際限無く面白い物語です。
ただ、本物も紙屑のごとく破片となってもその真贋が問われるほどのものだったようです。
仮名文字の標本手本
この書は、仮名文字の標本であり手本とされた藤原行成筆でした。
藤原行成の書に冷泉為恭がとらわれるのは,
行成が清少納言への書状であり、
それまた様々な人たちが、仮名文字の「手本」としたからでしょう。
ともかく、行成の書があまりにも美しくて、
私自身この仮名文字のように書きたいと思ってきたものがほとんど偶然にも、
藤原行成筆だったのです。
特に、肝心の仮名である、「あ」・「す」・「て」・「な」等は秀逸に美しいと思っています。
だから、歴史的な数多くの逸話の中で残されたこの書・『仮名消息』も、
私には「夢の形見」の一つだと考えています。


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「資本主義からの逃走」
  「革新が始まっているから、私の『夢の形見』を」


   


     2月 7th, 2011  Posted 12:00 AM

文明と文化の共時的変革時
21世紀ようやく11年目です。
20世紀もそうだったように変革の時のようです。
文明と文化が共時的に変革してきています。
政治は、いかにも民主主義と言われてきた「共和制」も限界でしょうか。
エジプトから今後も、とてつもなく悲惨な実例が増えるでしょう。
翻って、技術も、「ムーアの法則」が限界かもしれません。
ムーアの法則も当然ながら、彼の先験的思想性からはいっぱい学んで来たと思います。
講演でも引用させてもらってきました。
特に、「土」=シリコン・「ガラス」=光ファイバー・「空気」=internet、
この基調講演を1992年・箱根で聞いた時のショックはここでも書いてきました。
そして、今や、ムーアの法則でのLSIなどチップも3D化技術に向かっていますが、
これも新たな展開で変革するでしょう。
さらに、驚愕するいくつかの技術開発をデザイナー・大学人として直面しています。
しかし一方では、このような大きな変革が地球環境の「破壊」だと勘違いしている言説もあります。
功罪相反なれど理想主義を
結局は、歴史が事実をジャーナルとして証拠立ててくれるでしょう。
そして、次のような言説は最も信頼できません。
結果をこの上ない悪罪として、
近未来を語ろうとするジャーナリズムの言論人(かっては羽織ゴロだった人)です。
所詮、人間は完全ではありませんから、「功罪相半ば」が人間の歴史をつないできてくれました。
当然、「功罪」があろうが、今日より明日に理想をということになれば、
私は、理想主義としての「革新」を求めたいという立場です。
無論、「保守」としての伝統との中庸も私の一義です。
このところ、実現は50年後かもしれないデザインに自分を立ち向かわせています。
それは、近未来への革新をつないでいくことになるという想像です。
実現の日を、私は見ることはできないかもしれませんが、
私なりに「夢の形見」を描き残したいと願っています。


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